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TORENDIA

火山の名について

本文約7,000字 ・ 読了時間 約14分

あらすじ(AIが作成しました)

日本の「アソ」や「ウス」といった火山名が、カムチャツカやマリアナ群島など世界各地の火山名と類似している点に着目し、これらが偶然の暗合か否かを統計学的手法を用いて検証する。山名の由来に関する伝承や付会説を排し、理科年表などから得た現在の火山名を機械的に分類・計算した結果、特定の名称型が統計的に偶然とは考えにくい頻度で出現することを示す。これらは一部で関連性を持つ可能性を暗示し、言語学的考察の端緒として将来の参考資料を提示する。

寺田寅彦

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日本から南洋へかけての火山の活動の時間分布を調べているうちに、火山の名前の中には互いによく似通ったのが広く分布されていることに気がついた。たとえば日本の「アソ」、「ウス」、「オソレ」、「エサン」、「ウンセン」等に対してカムチャツカの「ウソン」、マリアナ群島の「アソンソン」、スマトラの「オサール」などがあり、またわが国の「ツルミ岳」、「タルマイ山」、「ダルマ山」に対しジャヴァの「ティエリマイ」、「デラメン」などがあるという類である。それで、これは偶然の暗合であるか、あるいはこれらの間にいくぶんかの必然的関係があるかをできるなら統計学的の考えから決定したいと思ったのである。

この統計の基礎的の材料として第一に必要なものは火山名の表である。しかしこの表を完全に作るということがかなりな難事業である。まずたくさんの山の中から火山を拾い出し、それを活火山と消火山に分類し、あるいは形態的にコニーデ、トロイデ、アスピーテ等に区別することは地質学者のほうで完成されているとしても、おのおのの山には多くの場合に二つ以上の名称がありまた一つの火山系の各峰がそれぞれ別々の名をもっているのをいかに取り扱うかの問題が起こる。

また火山の名が同時に郡の名や国の名であったりすることがしばしばある。その場合そのいずれが先であるかが問題となる。国郡のごとき行政区画のできるはるかに前から、火山の名が存し、それが顕著な目標として国郡名に適用されたであろうとは思われるが、これも確証することはむつかしい。

山の名の起原についてはそれぞれいろいろの伝説があり、また北海道の山名などではいかにももっともらしい解釈が一つ一つにつけられている。これをことごとく信用するとすれば自分の企てている統計的研究の結果が、できたとしても、それは言語学的に貢献することは僅少となるであろう。しかし自分の見るところではこれらの伝説は自然科学的の立場から見ればほとんど無価値なものであり、またアイヌ語による解釈も部分的には正しいかもしれないが到底全部が正しくないことは、人によって説の違う事実からでも説明される。

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