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TORENDIA

物質群として見た動物群

本文約2,600字 ・ 読了時間 約6分

あらすじ(AIが作成しました)

地震と漁獲高の相関調査などを通じ、生物的・人為的現象に物理学的解析を応用することの是非を論じる。個々の意志や複雑な個性を無視し、集団を統計的な「大数」として扱うことで、無機的な物理法則が適用可能であることを実証例と共に示す。生物学的な事象を物理学で扱うことへの根強い偏見を批判し、科学の進歩を妨げる要因は専門家自身の認識不足にあると説く。

寺田寅彦

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🎧 物質群として見た動物群 / 朗読音声: VOICEVOX:春日部つむぎ

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せんだって、駿河湾北端に近い漁場における鰺の漁獲高と伊豆付近の地震の頻度との間にある関係があるらしいということについて簡単な調査の結果を発表したことがあった。このように純粋に物質的な現象、すなわち地震のような現象と、生物的、かつ人為的要素の錯雑した漁獲といったようなものとの間の相関を取り扱うことが科学的に許容されるかどうかという問題については、往々物理学者の側でもまた生理学者の側でも疑問をさしはさむ人が存するようである。近ごろまた自分の知人の物理学者が魚群の運動に関する研究に物理学的の解析方法を応用しておもしろい研究をしているのであるが、これに対しても、生理学者の側では「生物の事が物理学でわかるはずがない」という簡単な理由から、その研究の結果に正当な注意の目を向けることなしに看過する傾向があるかと思われる。

人間のごとき最高等な動物でも、それが多数の群集を成している場合について統計的の調査をする際には、それらの人間の個体各個の意志の自由などは無視して、その集団を単なる無機的物質の団体であると見なしても、少しもさしつかえのない場合がはなはだ多い。たとえば街路を歩行する人間の「密度」や「平均速度」に関する統計などには、純粋な物質的の問題たとえばコロイド粒子の密度の場合に応用さるる公式を、そのまま使用しても立派に当てはまることが実証的に明らかになっている。平田理学士は、先年、某停車場の切符売り場の窓口に立ち寄る人の数に関する統計的調査に普通の統計理論を応用して、それが相当よく当てはまる事を確かめた。最近に東京帝国大学地震学科学生某氏は市内二か所の街上における自動車の往復数に関する統計についても、やはりかなりの程度まで同様な物理的方則が適用される事を示した。これらはむしろ当然なことと言わなければならない。いわゆる「大数」の要素の集団で個々の個性は「充分複雑に」多種多様であって、いわゆる「偶然」の条件が成立するからである。

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