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TORENDIA

窪川稲子のこと

本文約3,200字 ・ 読了時間 約7分

あらすじ(AIが作成しました)

日本プロレタリア作家同盟で活動を共にした窪川稲子との出会いから、過酷な状況下での献身的な生活と作家としての姿勢を回想する。家庭の困窮や夫の収監という困難の中でも、情に流されず強固な意志と鋭い洞察力を持ち続けるその人間像を辿る。自身の作家的経験や家庭背景に甘んじず、真摯に芸術と向き合う稲子の在り方を評価し、階級の連帯に基づく生涯の友としての深い信頼と感慨を綴る。

宮本百合子

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🎧 窪川稲子のこと / 朗読音声: VOICEVOX:春日部つむぎ

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窪川稲子に私がはじめて会ったのは、多分私がもとの日本プロレタリア作家同盟にはいった一九三〇年の押しつまってからのことであったと思う。私はその頃本郷の下宿にいて、そこで会ったように思う。最初の印象は、今日もう思い出せなくなってしまっている。そのときも彼女らしく、どこといって変に目立つようなところを外見にもっていなかったのであったろう。

次の年の寒い時分、大阪に『戦旗』の講演会があって徳永直、武田麟太郎、黒島伝治、窪川稲子その他の人々が東京駅から夜汽車で立った。私は次の日出かけることになっていてステーションまで皆を送りに行ったら、丁度前の日保釈で出たばかりの小林多喜二が、インバネスも着ず大島絣の着物の肩をピンと張って、やっぱり見送りに来ていた。待合室の床の上にカタカタと高く下駄の音をたてて歩きながら小林は大きい声で秋田訛を響かせつつ何か話していた。

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