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TORENDIA

『トルストーイ伝』

本文約1,600字 ・ 読了時間 約4分

あらすじ(AIが作成しました)

ビリューコフによるトルストイ伝について、資料の豊富さと考証の正確な点を論じる。全四巻で構成される本作は、トルストイの祖先から結婚までを扱う第一巻をはじめ、本人をして自己を語らしめる姿勢で綴られる。膨大な記述を通じ、偉大な芸術家の生活や内面的な発展の過程を詳述しており、今日においてもトルストイという人物を歴史的背景の中で再考する際、その研究を裏付ける不朽の価値をもつ文献として紹介する。

宮本百合子

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🎧 『トルストーイ伝』 / 朗読音声: VOICEVOX:玄野武宏

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数あるトルストイの伝記の中でも、このビリューコフの『トルストーイ伝』は、資料の豊富なことと考証の正確な点で、最も基礎的な参考文献であろう。これまであらわれたトルストイ研究は、その土台を何かの意味でビリューコフの伝記においていた。

十六年前に第一巻が訳されて、全四巻が完訳されるのは今度がはじめてであるのだそうだ。完成の上は、日本の読者も心に親しいトルストイについておびただしい新しい知識を増すであろう。訳者の労も感謝されなければならないと思う。

ビリューコフが、この精密をきわめた結果尨大な本とならざるを得なくなったトルストイの伝記を書きはじめたのは一九〇四年、ジェネヴァでのことであった。当時、宗教上の問題から国外生活を余儀なくされていたビリューコフがフランスで出版されるトルストイの作品集に添うものとして、執筆したのであった。

伝記記者としてのビリューコフは、終始一貫して事実に正確忠実であろうとし、常に「トルストーイ自身をして自己を語らしめるように努力」している。その態度が、つまりはこの伝記の資料的な豊富さをも信頼に足るものとしているのである。

第一巻は、トルストイの祖先たちの家譜から一八六二年、既に作者として揺がぬ歩みを示しはじめた三十四歳のトルストイがベルス家のソーフィヤと結婚するまでを扱っている。

この大部な第一巻だけを見ても、内容の精密さ、遺漏なきを期せられている周到さがはっきりわかるのであるが、同時に、頁毎にくりひろげられるこの偉大な人間及芸術家の生活現象に密林はおそろしいほど鬱蒼としているものだから、そのディテールの中で迷いこんでしまわないためには、その密林をとおして各々の客観的な歴史的な位置を知らせる、云ってみれば生活磁石のようなものが求められて来る。この気持は、単に読者の贅沢であろうか。今日では、人間一個の生活の歴史も、更によりひろい歴史との相互的ないきさつの中で生きられたものとして眺め、学びたいという文化の感情にまで、私たちの世代が成長して来ているのでもあると思う。

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