一粒の粟
本文約3,000字 ・ 読了時間 約6分
あらすじ(AIが作成しました)
芝生に転がる自惚れ屋の太鼓は、傍らに落ちた小さな粟の粒を嘲笑い、自らの音色を誇示する。子供に叩かれ声を張り上げる太鼓に対し、粟は静かに土中で根を張り成長を続ける。やがて時が経ち、太鼓が朽ち果てた後には、その中から青々とした粟の芽が日光を浴びて健やかに育っている。本作は、外見や虚栄に執着する存在と、自らの生命の本分を静かに全うする存在の対比を通じて、真実の生き方や魂の在り方を綴る短編である。
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或る芝生に、美くしく彩色をした太鼓が一つ転っていた。子供が撥を取りに彼方へ行っている間、太鼓は暖い日にぬくまりながら、自分の美くしさと大きさとを自慢していた。
すると丁度その時頭の上を飛んで行った小鳥が、何かひどく小さいものを彼の傍に落して行った。
気持の好い空想を破られ、それでムッとして見ると、薄茶色の粟が一粒いる。自負心の強い太鼓は忽ち小癪な奴だと思った。俺が折角いい心持で美くしい体を日に暖めているのに、何だ、此那見すぼらしい体をしている癖に突当ったりして! 其処で彼は
「おいおい、気をつけてくれ、俺が此処にいるよ」
と云った。
「私が何かしましたか」
「何かしましたか? 怪しからん。切角俺が好い心持でいる処を何故驚かせた」
「其は悪うございました御免下さい。けれども私は貴方を喫驚させる為に落ちたのではありません。私は此処で生えなければならないのです。御気に障ったら御免下さい」
「生えなければならないと? 生意気な事を云うな、第一お前のなりを考えろ、小さくて、見栄えもしない茶色坊主で、フム何が出来る。俺を見ろ、大きいぞ、素晴らしく美くしいぞ、如何うだ此の光る金色を見て羨しくないかハハハ其にお前なんかは蟋蟀ほどの音も出せないじゃあないか、まあまあ俺の見事な声を聞いてから目を廻さない要心をしているが好い」
其処へ折よく撥を持った主人の子供が来たので、五色の太鼓は益々活気付いて、黙っている粟を罵った。
「さあ始めるぞ、俺の声を聞かされてからいくら平あやまりにあやまっても勘弁はしないからな」
そう云いながら、太鼓は打たれるままに、全力を振絞って大声をあげた。小さい癖に落付き払っている粟の奴の胆を潰させようとして、太鼓は体中に力を入れてブルブル震えながら遠方もない叫声をあげてたのである。
けれども、一二度叩くと、子供はもういやだと云って打つのを止めてしまった。太鼓が余り大きな見っともない声を出すので、子供は嫌いに成ってしまったのだ。そして、撥も何も捨てたまま何処へか行ってしまった。其処で太鼓は又粟に食って掛った。
「おい、どうだ俺の声を聞いたか、素晴らしいだろう――何故黙っている、何とか云うものだ」