本文へ移動
TORENDIA

五年後

本文約390字 ・ 読了時間 約1分

あらすじ(AIが作成しました)

原爆投下の翌日、東照宮の境内でたどり着いた清水のほとりと、鳥居の下で泣き叫んでいた火傷の娘の記憶を、五年前のノートの言葉とともに書き留める原民喜の文章。

原民喜

速度
🎧 五年後 / 朗読音声: VOICEVOX:青山龍星

💰 この本を応援する(投げ銭)

1 / 1

竜ノ彫刻モ

高イ石段カラ割レテ

墜チ

石段ワキノ チョロチョロ水ヲ

ニンゲンハ来テハノム

炎天ノ溝ヤ樹ノ根ニ

黒クナッタママシンデイル

死骸ニトリマカレ

シンデユク ハヤサ

鳥居ノ下デ 火ノツイタヨウニ

ナキワメク真紅ナ女

これは五年前のノートに書きなぐっておいたものである。

五年前……。私はあの惨劇の翌日、東照宮の境内にたどりつき、そこで一昼夜をおくった。

石段わきの木陰に、沸いて流れる水があって、私はときどき咽喉を潤したものだ。あの水のところには、絶えず誰かが来て、かがんでいたようだ。水を飲むためばかりでなく何となく、私の足はあの清水のところに向かうのだった。今でも……。満目惨たる記憶のなかで、あのささやかな水は何かを囁いていてくれるようだ。

東照宮の鳥居の下で、反転していた火傷の娘、

兵隊サン 助ケテ

あの声が真紅だったのか、あの口が真紅だったのか……くらくらと頭上に空間がくずれ墜ちるようだ。

完

原民喜の他の作品

同じジャンルの朗読つきの本