本文へ移動
TORENDIA

貝殻追放

本文約380字 ・ 読了時間 約1分

あらすじ(AIが作成しました)

古代アテネの貝殻投票による追放の風習を、衆愚に支配される現代日本の姿に重ね合わせ、甘んじて待つより自ら一票を投じようと語る水上瀧太郎の随筆。

水上瀧太郎

速度
🎧 貝殻追放 / 朗読音声: VOICEVOX:九州そら

💰 この本を応援する(投げ銭)

1 / 1

古代希臘アゼンスに於ては、人民の快とせざるものある時、其の罪の有無を審判することなく、公衆の投票によりて、五年間若くは十年間國外に追放したりといふ。牡蠣殼に文字を記して投票したる習慣より貝殼追放の名は生れしとか。

今日人は此の單純野蠻なる審判を吾等には無關係なる遠き代のをかしき物語として無關心に語り傳ふれども、熟々惟みるに現在吾々の營める社會に於ても、一切の事總て貝殼の投票によりて決せらるるにはあらざるか。厚顏無智なる彌次馬が、その數を頼みて貝殼をなげうつは、敢てアゼンスの昔に限らず、到る處に行はると雖、殊に今日の日本に於てその甚しきを思はざるを得ず。その横暴に苦しみつつ、手を束ねて追放を待つは、潔きには似たれどもわが生身の堪ふるところにあらず、果して多數者と意嚮を同じくするや否やはしらずといへども、如かず進んで吾も亦わが一票を投ぜんには。(大正六年冬)

完

水上瀧太郎の他の作品

同じジャンルの朗読つきの本