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TORENDIA

丹下左膳

本文約238,200字 ・ 読了時間 約477分

あらすじ(AIが作成しました)

伊賀の若き剣客・柳生源三郎は、縁談のため門弟を引き連れ江戸へ向かう。品川で宿をとる一行は、無礼講の宴で江戸入りを祝う。一方、司馬道場への挨拶が拒絶されるという事態に柳生流師範代の安積玄心斎は憤るが、当の源三郎の姿は見えない。やがて源三郎は左膳と共に地下室へ幽閉され、天井の穴から刻々と流れ込む水が二人を追い詰める。閉鎖された地底で、脱出の術もなく水位が上昇する危機的な状況下、二人は生き残るための道を探る。

林不忘

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伊賀の暴れん坊

一

さっきの雷鳴で、雨は、カラッと霽れた。

往来の水たまりに、星がうつっている。いつもなら、爪紅さした品川女郎衆の、素あしなまめかしいよい闇だけれど。

今宵は。

問屋場の油障子に、ぱっとあかるく灯がはえて、右往左往する人かげ。ものものしい宿場役人の提灯がズラリとならび、

「よしっ! ただの場合ではない。いいかげんに通してやるゆえ、行けっ!」

「おいコラア! その振分はあらためんでもよい。さっさと失せろっ」

荷物あらための出役と、上り下りの旅人のむれが、黒い影にもつれさせて、わいわいいう騒ぎだ。

ひがしはこの品川の本宿と、西は、琵琶湖畔の草津と、東海道の両端で、のぼり下りの荷を目方にかけて、きびしく調べたものだが、今夜は、それどころではないらしい。

ろくに見もせずに、どんどん通している。

大山もうでの講中が、逃げるようにとおりすぎて行ったあとは、まださほど夜ふけでもないのに、人通りはパッタリとだえて、なんとなく、つねとは違ったけしきだ。

それもそのはず。

八ツ山下の本陣、鶴岡市郎右衛門方のおもてには、抱き榊の定紋うった高張提灯を立てつらね、玄関正面のところに槍をかけて、入口には番所ができ、その横手には、青竹の菱垣を結いめぐらして、まんなかに、宿札が立っている。

逆目を避けた檜の一まい板に、筆ぶとの一行――「柳生源三郎様御宿」とある。

江戸から百十三里、伊賀国柳生の里の城主、柳生対馬守の弟で同姓源三郎。「伊賀の暴れン坊」で日本中にひびきわたった青年剣客が、供揃いいかめしく東海道を押してきて、あした江戸入りしようと、今夜この品川に泊まっているのだから、警戒の宿場役人ども、事なかれ主義でびくびくしているのも、むりはない。

「さわるまいぞえ手をだしゃ痛い、伊賀の暴れン坊と栗のいが」

唄にもきこえた柳生の御次男だ。さてこそ、何ごともなく夜が明けますようにと、品川ぜんたいがヒッソリしているわけ。たいへんなお客さまをおあずかりしたものだ。

その本陣の奥、燭台のひかりまばゆい一間の敷居に、いま、ぴたり手をついているのは、道中宰領の柳生流師範代、安積玄心斎、

「若! 若! 一大事出来――」

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