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TORENDIA

雑記帳より(Ⅰ)

本文約2,200字 ・ 読了時間 約5分

あらすじ(AIが作成しました)

フランスの対外戦争における言葉選びから日本の伝統芸能や現代の風俗に至るまで、日常で目にする事象を鋭い観察眼で捉えた随筆。異文化の表現と比較して自国の歴史記述を省みる考察や、夜道で遭遇する物乞いのあり方、流行の音楽や食事作法に見る時代の変化、そして映画の演出と土佐の伝統舞踊を比較する独自の視点を収める。日常の何気ない出来事の裏側に潜む社会の変容や人間の心理を、多角的な知見から紐解いていく。

寺田寅彦

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一

フランスの絵入雑誌を見ていると、モロッコ地方の叛徒の討伐に関する写真ニュースが数々掲載されている。それらの写真の下にある説明の文句を読んで見ると「モロッコ地方の Pacification のエピソード」と云ったような言葉が使ってある。直訳なら「平和化」で、先ず「平定」とでも訳する所であろうが、とにかくフランス人らしい巧妙な措辞である。「誅戮」「討伐」「征伐」「征討」などと、武張ったどこかの国のジャーナリストなら書きたい所であろう。それを「平和化」と云ったところはやはりフランス人である。

こんなことを考えてから間もなくのことである。ある有名な日本の歴史家がその著書の中に「朝鮮征伐」という文字を使ったのが甚だ不都合だと云って、某新聞の投書欄でひどく腹を立てた人があった。歴史家も日本人なら、この投書家も日本人である。

老子にこんな言葉があった。「果而勿矜。果而勿伐。果而勿驕。果而勿不得止。果而勿強。」老子はなかなかフランス人であったと見える。

二

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