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TORENDIA

都会の幽気

本文約10,500字 ・ 読了時間 約22分

あらすじ(AIが作成しました)

都会に漂う人間の息吹きや欲望が凝り固まって生じる幽気について綴る。恋に破れ夜の街を彷徨う男は、自分を追跡してくる正体不明の気配を感じるようになる。やがてその気配は具体的な姿を現し、男の身体に乗り移ろうと四方から迫る。街中のあらゆる場所で人々の過去の念が幽気となって浮遊し、生きた人間に取り憑いて同じ行動を繰り返させるという、魔物のような都会の恐ろしさを目の当たりにした男は、途方に暮れながら街中に立ち尽くす。

豊島与志雄

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都会には、都会特有の一種の幽気がある。暴風雨の時など、何処ともなく吹き払われ打ち消されて、殆ど姿を見せないけれども、空気が凪いで澱んでいる時には、殊に昼間よりは夜に多く、ぼんやりと物影に立現れたり、ふらふらと小路を彷徨したりする。

幽気があるのは、必ずしも都会に限ったものではない。田舎には田舎の幽気があり、山林田野には山林田野の幽気がある。然しそれらの幽気はみな、人間離れのした怪異味を有するものであるが、ただ都会の幽気だけは、どこまでも人間的であり、人間の匂いを持っている。

幽気であって幽鬼でない以上、それは勿論、形あるが如くなきが如く、音も立てず口も利かず、ただそれと感じられるばかりで、朦朧と浮游しているのであるが、一度それに触れると、人は慄然として、怪しい蠱毒が全身に泌み渡るのを覚ゆる。

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