生活のうるほひ
本文約4,200字 ・ 読了時間 約9分
あらすじ(AIが作成しました)
趣味や娯楽は生活を飾る付加物ではなく、それに取り組む心持ちや姿勢が日々の生活そのものを浄化し、秩序立てるものであると説く。また、殺風景な日常にうるおいをもたらす要素として、家族愛や日本古来の義理人情の重要性を強調する。戦時下においても、悲観的な現状を嘆くのではなく、希望や夢を持ち、自らの心にうるおいを蓄えながら次代の子供たちを育むべきだと、女性の持つ力に期待を込めて論じる評論である。
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趣味といふ言葉は非常に広く使はれてゐますが、一般には好きなことゝいふ程度に解釈され、読書、映画、スポーツ、釣、将棋などと雑多なものが一様に趣味といふ範囲に入れられてしまふわけでありますが、ほんたうをいふと、高い精神的な訓練を経て、初めてそれを趣味として身につけるやうな種類のものもあり、またほんのやり方を覚えさへすれば、一通り遊びとしての暇つぶしの出来るやうなものなど、色々あります。
生活のうるほひとしてのこれ等の趣味は、時と処とに応じ、その選択は全く自由でありますけれども、趣味といふよりも慰安娯楽といつた方が適当なものもあり、更にまたそれに興味をもつ程度によつては、むしろ趣味といふよりも道楽といつた方がいゝやうな、幾分弊害を伴ふ場合も生じてくるのであります。
趣味にしろ娯楽にしろ、元来自分の生活以外に求めるといふ考へ方は、間違つてゐると思ひます。たとへば音楽に趣味をもつてゐる人ならば、その人の生活は少くとも音楽によって浄化され、また音楽によつて明日の力を与へられるやうになつてゐなければならないと思ひます。茶の湯、生花を婦人の趣味として習ふ場合、それは決して、生活をかざるものとして、生活に何かをつけ加へようとして習ふのは、大きな間違ひだと思ひます。
茶の湯も生花も共に、日本人のすぐれた趣味が作り上げた最も純粋な生活芸術なのでありまして、その技術を身につけるといふことは、茶の湯なり生花なりの精神をもつて、日常生活の隅々を最も日本的に秩序立て、美化する一つの道なのであります。従つて、茶の湯や生花の稽古に通ふ若い女性が、非常に趣味の悪いけば/\しい服装をしてゐたり、人前でろくに話も出来ないやうなみだしなみを暴露するやうでは、全く何のための茶の湯生花だかわからないのであります。