TORENDIA
昭和十年度劇界
への指針
岸田國士
TORENDIA
昭和十年度劇界への指針
本文約1,700字 ・ 読了時間 約4分
あらすじ(AIが作成しました)
歌舞伎、新派、新劇といった当時の演劇界の現状と課題を分析し、進むべき方向性を論じる。歌舞伎は現代化による通俗化を避け、新派劇は現代劇への脱皮を促す。新劇に対しては、研究的な純芸術と職業的な大衆劇への分離の必要性を説き、現状の混迷を脱するための再出発と、現代劇専門家としての確かな技術獲得を提言する。演劇の本質を見据え、先駆者としての姿勢と職業人としての責任の両面から、次代の演劇のあり方を厳しく指し示す。
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拝復
別に新しい意見でもありませんが、小生の持論を要約します。
一、歌舞伎劇は旧きが故に、純化されたるが故に善いのであつて、これを現代向きに、或は、通俗的にしてしまつては切角の値打がなくなる。それ故、これを営利事業と結びつけることは歌舞伎劇のために甚だ危険である。若し、現在の観衆が、髷物をよろこぶと云ふなら、よろしく、歌舞伎劇から分離した大衆時代劇(既にこの種のものが所謂歌舞伎俳優によつて演ぜられてゐる)を与へるがよろしい。但し、純粋の歌舞伎俳優は、現代意識を盛つた大衆時代劇は演じ得まいと思はれる。
二、所謂新派劇こそは滅ぶべきである。文化的意義が全然ないからである。但し、新派俳優は滅んではならず、また、文字通り滅びはすまい。即ち、現在の新派俳優中、将来ある人々は、自然、所謂「新派臭」から脱して、現代の新鮮な空気を呼吸するであらう。さうすれば、その時は、もう新派俳優ではなく、現代劇俳優であり、新派劇今日の姿は都会から影を消すであらう。
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