二つの答
本文約3,800字 ・ 読了時間 約8分
あらすじ(AIが作成しました)
仏蘭西の演劇文化や芸術団体への見解と、日本の現代劇が抱える課題を論じる。演劇を学問とせず個人的な鑑賞に委ねる仏蘭西の特質を紹介しつつ、日本の現代劇におけるプロの不在や、素人が専門家の模倣に終始する現状を指摘する。既存の新派劇の良さを再評価し、型にはまらずとも朗らかで優れた作品を求める姿勢を示すとともに、新しい日本の演劇を確立するための心得と方向性について言及する。
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仏蘭西の演劇聯盟乃至劇研究団体について何か書けといふ御註文ですが、御承知の通り、仏蘭西人は、頗る社交的であると同時に、極めて自立的で、社会的交際は盛んであるが、組織的団体を作ることはあまり好まない。大きな欠点とも云へるでせうが、そこにまた、民族的文化の特質があると思ひます。
大阪演劇聯盟の組織や事業については、僕はまだよく研究してをりませんが、これに類するものが、独逸や亜米利加に――従つて日本に発達する可能を以てをることも亦民族的特質――従つて欠陥の半面を語るやうに思へます。
僕は滞仏中、劇場はもとより、色々な芸術的団体に接近する機会も少くありませんでしたが、少数の「先駆芸術団体」を除いては、一般公衆の、言ひ換へれば、素人の「芸術研究団体」といふものがあるのを聞きませんでした。所謂素人劇団は沢山あります。然しそれは、所謂劇壇なるものと全く没交渉で、金などを取れば、それこそ人が見には行きません。
それならば、公衆は演劇鑑賞の標準を何によつて定めるかと云へば、たゞ個人的趣味によつてと云ふより仕方がありません。勿論、専門の劇評家は毎興行の初日に、筆を揃へて各新聞の劇評欄を賑はせます。之を見て、どの劇場に行かうとか、今度は面白さうだとかいふ、つまり観劇の動機を与へ、その方向を決定することもあるでせう。然し、やつぱりその人その人の教養、趣味によつて、劇場を選び結果を評価する以外に、そしてそれが屡々輿論を作る以外に、他動的な、又は団体的観劇組織といふやうなものは全く無いと云へます。