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TORENDIA

レイモンドの『農民』

本文約1,300字 ・ 読了時間 約3分

あらすじ(AIが作成しました)

ヤグナとアンテクの性格を軸に、ある農村での生活とそこで繰り広げられる大きな人生の波を描く。思想や傾向を排し、農村の色彩を生々しく写し取った長篇小説の第一部『秋』の情景と、作者の人物配置や描写手法を論じる。農民の生活を穏やかに描き出し、日本の農村文学における今後の展開や手法の参考となる可能性について言及する。

田山録弥

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🎧 レイモンドの『農民』 / 朗読音声: VOICEVOX:もち子さん

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第一に私の気に入つたのは、この作が何等の傾向も、思想も、宣伝も持つてゐないことだつた。農民小説といふ臭気すらなかつたと言つて好かつた。作者はたま/\さういふ農村の生活に浸つてゐたために、それを題材にして大きな人生を展開しただけだ。大きな人生の波の中に浮いたり沈んだりする人間を書いただけだ。そこが私の気に入つた。作者はかうでなくてはならないのだ。従つてこの作は非常に落ち付いてゐる。寧ろドツカリと腰を落ち付けて書いてゐる。そのあらはさうとするものだけに心を集中してゐる。わき目を触らない、この点だけでも、日本の作者達の大きな参考になる。

それはいろ/\な形ちにおいて欠点はあるにはある。章から章を追つて層叙法を用ひたのなどはあまり新しいとはいへない。ああいふ形はツルゲネフあたりにすらもない。それに、人物のきざみ方も具象された度数においては決してすぐれてゐるとはいへない。傀儡にはなつてゐないにしても、作者の頭にあまりに整然と考へられすぎた形がある。それは人物の配置の上などに注意すればすぐわかる。それにもかゝはらず、場所によつては測々として人を動かす。力も籠もつてゐる。農村のカラアも生々として出てゐる。ことに、この『秋』には、長篇の発端であるに相応しい最初の意気込みがよくあらはれてゐる。

ヤグナとアンテクとは、悲劇の原動力となるに相応しい性格を展開しかけてゐる。しかしこれもいろ/\なことを私に思はせた。私の考へではこの作の底をつらぬいてゐる線は、さう大して細いとはいへない。心理派の作者の書いたやうに、人間の魂を振るはせるといふやうな微妙なところはない、わるくすると、縄のやうになつてしまひはせぬかと危ぶまれる。

それにこの作者には、トルストイの持つたやうな他界的なところが乏しい。またツルゲネフの持つたやうな『詩』にも欠けてゐる。農村の外形ははつきりと出て来てゐるけれども、農民といふものゝ内部生活の描写はさう大して深いとはいへない。トルストイの『コザツクス』の中に出るカウカサスの生活などの方がもつと深い。

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