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TORENDIA

美味い豆腐の話

本文約1,800字 ・ 読了時間 約4分

あらすじ(AIが作成しました)

湯豆腐を美味く食べるための条件として、良質な豆腐の選び方や、土鍋、杉箸、だし昆布、薬味、醤油といった必要な道具と材料の吟味を論じる。京都の良水と伝統的な製法の重要性を強調し、機械化や質の低下が続く中で、自ら良水と厳選した原料を用いて豆腐作りを追求した体験を綴る。豆腐の本質的な味を引き出すための調理の心得と、食を仔細に楽しむための心構えを提唱し、各地の食文化を参考に美食を追求する姿勢の大切さを説く。

北大路魯山人

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🎧 美味い豆腐の話 / 朗読音声: VOICEVOX:青山龍星

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美味い湯豆腐を食べようとするには、なんといっても豆腐のいいのを選ぶことが一番大切である。いかに薬味、醤油を吟味してかかっても、豆腐が不味ければ問題にならない。

そんなら、美味い豆腐はどこで求めたらいいか? ズバリ、京都である。

京都は古来水明で名高いところだけに、良水が豊富なため、いい豆腐ができる。また、京都人は精進料理など、金のかからぬ美食を求めることにおいて第一流である。そういうせいで、京都の豆腐は美味い。

一方、東京では、昔、笹乃雪などという名物の豆腐があった。これもよい井戸水のために、いい豆腐ができたのだが、今は場所も変わって、わずかに盛時の面影を偲ぶばかりだ。

東京は水の悪いことが原因してか、古来、豆腐の優れた製法が研究されていない。そんなわけで、昔も今も東京で美味い豆腐を食べることはまず不可能だ。それに、よい豆腐を美味く食うための第一条件であるいい昆布が、東京では素人の手に入りにくいから、なおさらむずかしい。

それなら、京都の豆腐は今なおどこでも美味いかというと、どっこい、そうはいかない。今日では水明の都でも、水道の水と変わり、豆をすることは電動化して、製品はすべて機械的になってしまったのみならず、経済的に粗悪な豆(満州大豆)を使うようになったりなどして、京都だからとて、美味い豆腐は食べられなくなってしまった。

ところが、わずかに一軒、京都の花街、縄手四条上ルところに、昔ながらの方法を遵奉して、よい豆腐をつくっている家があった。その家の豆腐のつくり方は秘法になっていて、うかがわんとしても、うかがえないことになっていた。ところが、私は運よくその家の主人の了解を得て、家伝の秘法を授けられることになった。おかげで、本家本元の豆腐に優るとも劣らぬ豆腐ができるようになった。それも一に、私の家に豆腐に適するすばらしい良水が湧出したためであった。

いかに京都で秘法を授かって来ても、良水を欠いたら、いい豆腐はできなかったであろう。残念ながら、縄手のこの店も、今はなくなってしまった。

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