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TORENDIA

笑わない娘

本文約3,700字 ・ 読了時間 約8分

あらすじ(AIが作成しました)

富豪の両親に大切に育てられた美しい娘は、何を与えられても笑うことがなかった。宝石屋、徳の高い老人、若い医者らが娘の心を解き明かそうと試みるが、誰一人として笑わせることはできなかった。ある日、旅の曲馬師の誘いに応じた娘は、一行に加わって各地を巡る旅に出る。一年後、故郷へ戻った娘は、驚くほど快活で明るい表情を見せるようになっていた。本作は、娘が旅の中で見出した真実の喜びを描く。

小川未明

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🎧 笑わない娘 / 朗読音声: VOICEVOX:九州そら

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あるところに、なに不足なく育てられた少女がありました。ただ一人ぎりで、両親にはほかに子供もありませんでしたから、娘は生まれると大事に育てられたのであります。

世間にも知られるほどの金持ちでありましたから、娘はりっぱな家に住み、食べ物から着る物まで、ほかの子供らには、とうていそのまねのできないほど、しあわせに日を送ることができたのであります。

娘は大きくなると、それは美しゅうございました。目はぱっちりとして、髪の毛は黒く長く、色は白くて、この近隣に、これほど美しい娘はないといわれるほどでありましたから、両親の喜びは、たとえようがなかったのであります。

けれど、ここに一つ両親の心を傷めることがありました。それは、こんなに美しい娘が、いつも黙って、沈んでいて、うれしそうな顔をして笑ったことがなかった。

「なぜ、あの子は笑わないだろう。」

「まんざらものをいわないこともないから、おしではないが、いったいどうした子だろう。」

両親は、顔を見合わせて、うすうす我が子の身の上について心配しました。

なにしろ、金はいくらもありますから、金でどうにかなることなら、なんでも買ってやって、娘の快活にものをいい、楽しむ有り様をば見たいものだと思いました。

そこで、町へ人をやって、流行の美しい、目のさめるような華やかな着物や、また、飾りのついた人形など、なんでも娘の気に入りそうなものを、車にたくさん積んで持ってきて、娘の前にひろげてみせました。

娘は、ただ一目それを見たぎりで、べつにほしいともうれしいともいわず、また、笑いもしませんでした。両親は、娘の心を悟ることができなかった。

「なにか、心から娘を喜ばせるような美しいものはないものか。いくら高くても金をば惜しまない。」と、両親は、人に話しました。

そのことが、ちょうど旅から入り込んでいた、宝石屋の耳に、はいりました。すると宝石屋は、ひざを打って喜んで、これは、一もうけできると心で思いながら、その金持ちの家へやってきました。

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