赤いろうそくと人魚
本文約7,000字 ・ 読了時間 約15分
あらすじ(AIが作成しました)
北方の海に棲む人魚は、我が子が人間に育てられ幸福になることを願い、人間が住む町へ産み落とす。拾われた娘はろうそく屋の老夫婦に育てられ、描いた絵に不思議な力が宿るろうそくは人々に重宝される。しかし、娘を売ろうとする商人が現れ、ある夜、海から来た人魚の影と共に赤いろうそくが持ち去られると、海には大嵐が吹き荒れるようになる。やがてその山のお宮は災いをもたらす場所と恐れられ、ついには町も滅んでいく。
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一
人魚は、南の方の海にばかり棲んでいるのではありません。北の海にも棲んでいたのであります。
北方の海の色は、青うございました。あるとき、岩の上に、女の人魚があがって、あたりの景色をながめながら休んでいました。
雲間からもれた月の光がさびしく、波の上を照らしていました。どちらを見ても限りない、ものすごい波が、うねうねと動いているのであります。
なんという、さびしい景色だろうと、人魚は思いました。自分たちは、人間とあまり姿は変わっていない。魚や、また底深い海の中に棲んでいる、気の荒い、いろいろな獣物などとくらべたら、どれほど人間のほうに、心も姿も似ているかしれない。それだのに、自分たちは、やはり魚や、獣物などといっしょに、冷たい、暗い、気の滅入りそうな海の中に暮らさなければならないというのは、どうしたことだろうと思いました。
長い年月の間、話をする相手もなく、いつも明るい海の面をあこがれて、暮らしてきたことを思いますと、人魚はたまらなかったのであります。そして、月の明るく照らす晩に、海の面に浮かんで、岩の上に休んで、いろいろな空想にふけるのが常でありました。
「人間の住んでいる町は、美しいということだ。人間は、魚よりも、また獣物よりも、人情があってやさしいと聞いている。私たちは、魚や獣物の中に住んでいるが、もっと人間のほうに近いのだから、人間の中に入って暮らされないことはないだろう。」と、人魚は考えました。
その人魚は女でありました。そして妊娠でありました。……私たちは、もう長い間、このさびしい、話をするものもない、北の青い海の中で暮らしてきたのだから、もはや、明るい、にぎやかな国は望まないけれど、これから産まれる子供に、せめても、こんな悲しい、頼りない思いをさせたくないものだ。……
子供から別れて、独り、さびしく海の中に暮らすということは、このうえもない悲しいことだけれど、子供がどこにいても、しあわせに暮らしてくれたなら、私の喜びは、それにましたことはない。