廃灯台の怪鳥
本文約8,400字 ・ 読了時間 約17分
あらすじ(AIが作成しました)
千葉県外房海岸の廃灯台で微生物研究を行う宗方博士一行は、怪鳥に襲われる事件に遭遇する。壁に飾られた謎の鳥の剥製が血に染まり、吉井助手が頸を傷つけられる不可解な事態が続く中、かつてこの灯台で起きた同様の事件が明らかになる。新田助手は、怪鳥の正体が何者かによる巧妙な工作であると見抜き、気球を利用した犯行の全貌と、背後に隠された密輸の真実を突き止める。
リクエストが集まると、作家に音声化の需要が伝わります。
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見よその頸には怪鳥の爪痕が!
「きゃーッ」
遠くの方から、幾つかの反響を呼び起しつつ、微かに長く人の叫び声が聞えて来た。
寝台に横わったまま、枕卓子の上の洋灯の光で雑誌を読んでいた桂子は恟としながら頭を擡げた。――岸を噛む怒濤が悪魔の咆叫ぶように、深夜の空に凄じく轟いているほかは、ひっそりと寝鎮った建物の中に、何の物音もしていない。
「変ねえ、いま慥かに人の声が……」
呟きかけた時、今度こそ確きりと、それも胸を抉られるような怖ろしい声で、
「きゃーッ」と云う悲鳴が聞えて来た。
遠い方から曲り曲って来た声だ。慥に塔の上からである。桂子は慄然としながら寝台をとび下りると、父の部屋へ馳せつけて力任せに扉を叩いた。
「お父さま、大変よ、お父さま」
「……どうしたんだ」
「起きて頂戴、早くッ」
寝衣の上へ寛衣を引掛けながら、宗方博士を先に、助手の新田進も洋灯を持ってとび出して来た。
「何だ、どうしたんだ」
「いま、上の方できゃあッて云う声がしたの、二度もしたのよ。何か変った事があったに違いないわ、見に行ってよ」
「そうか、兎に角行ってみよう」
即座に、洋灯を持った新田を先頭に、博士と桂子の三人は階段の方へ馳せつけた。
此処は千葉県の外房海岸。俗に「不帰浜」という岩石峭立する荒磯から、二百ヤードほど距れた小島にある廃灯台であった。――高さ百五十呎の塔と二棟の附属建物は、既に使用されなくなってから二十年。殆ど廃墟も同様になっていたのを、一週間ほど前から宗方博士一行が借受けているのだ。
宗方博士は海水中の微生物研究では日本有数の権威者で今度この近海に発生した夜光虫の研究をするため、三人の助手と令嬢を伴れて移って来たのであった。――今宵は丁度八日め、助手の一人吉井禎吉を不寝観測番に残して、みんな寝についてから三時間、午前一時少し過ぎた時にこの事件が起ったのである。
三人は殆ど息もつかずに螺旋階段を馳登った。頂上は旧の発光室を改造した夜行虫観測所で、幾種類もの観測鏡や特殊の分光器などが備付けてある。――登って来た三人は、薄暗い洋灯の光の下に、血まみれになって倒れている吉井助手の姿をみつけて、
「あっ!」と其処へ立竦んだ。