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TORENDIA

探訪深泥池の蓴菜

本文約1,100字 ・ 読了時間 約3分

あらすじ(AIが作成しました)

京都上鴨の深泥池に伝わる良質なじゅんさいの採取現場を訪ねた紀行を綴る。池の周辺環境や、古くから伝わる独特の採取方法、さらに周辺の池での収穫時期の相違について詳述する。他所とは異なる透明なヌルヌルの特徴や、独自の原始的な舟に乗って行われる採取作業の様子、そして東京へ出荷される流通の実情を明らかにする。作者自身の食に対するこだわりと、この食材を日本最高の美食として評価する視点を収める。

北大路魯山人

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🎧 探訪深泥池の蓴菜 / 朗読音声: VOICEVOX:春日部つむぎ

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京都上鴨の深泥池のじゅんさいは、日本で一番いいという話は、かって本誌にも話したことがあった。今度自分は、京都に旅行したついでに、その深泥池に行って来た。

京都に行って様子を聞いてみると、深泥池のじゅんさいは、ちょうど五月一日から採り初めるとのことであった。古くからやかましい深泥池は、四方が山々にかこまれて、深刻な古びた感じのところと想像していたのに反して、ただ反面だけが山で、明るい平凡な池であった。池の周囲は、小一里位もあっただろうか。

そこに行ってみてわかったことだが、じゅんさいの一番いいのは、深泥池ではなかった。もっと奥の山一つを越して十丁ほど離れているなんとかいった池の方だった。これは、三方山陰になっているので幽邃な感じがして、池も深いようだった。ここは、山陰になっているせいか発芽が遅れて、五月十日頃から採ることになっている。深泥池を朔日から採り始めてそれを一応採り尽すと深泥池を再び採り始める。順次かくしてあちらを採り、こちらを採りして九月十日頃まで採り通しにしている。

この二つの池のじゅんさいが他所のよりもいいことは、あの透明なヌルヌルがたくさんあることである。このヌルヌルは新芽の発育を擁護するためあるものだと思っていたのに、太い丈夫なところにもあるのを見ると、他に理由があるものらしい。

採っている舟は梯子みたいなものに盥を載せている。南洋土人でも作りそうな原始的な舟であった。この舟に乗って朝六時頃から夕方頃まで採り通しにしている。時たま舟の中で吸う煙草が無上の楽しみだとのことだった。

この池のじゅんさいを採るのに一年に権利金が三百円いる。私が見に行った時の様子では、一日五升くらい採れそうであった。蔓を鎌で舟に引き寄せて、右の拇指の爪を非常に長く伸ばしていてヌルヌルの新芽を人差指の上にのせて切り取るのである。

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