三人の双生児
本文約43,500字 ・ 読了時間 約87分
あらすじ(AIが作成しました)
自身が幼い頃に見た、座敷牢に閉じ込められていた双生児の同胞の記憶を抱く女性が、その行方を捜し始める。成人した今、かつての記憶の真相を追求するなかで、遺伝学に基づいた人工妊娠という手段を用いて己の血族の特性や過去の謎を解き明かそうとする医師と対峙する。やがてかつての同胞の姿と再会した女性は、自身の胎内に宿る存在との向き合い方に苦悩し、運命を切り拓くために独自の決断を下す。
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あの一見奇妙に見える新聞広告を出したのは、なにを隠そう、この妾なのである。
「尋ネ人……サワ蟹ノ棲メル川沿イニ庭アリテ紫ノ立葵咲ク。其ノ寮ノ太キ格子ヲ距テテ訪ネ来ル手ハ、黄八丈ノ着物ニ鹿ノ子絞リノ広帯ヲ締メ、オ河童ニ三ツノ紅キ『リボン』ヲ附ク、今ヨリ約十八年ノ昔ナリ。名乗リ出デヨ吾ガ双生児ノ同胞。(姓名在社××××)」
これをお読みになればお分りのとおり、妾はいま血肉をわけたはらからを探しているのである。今より十八年の昔というから、それは妾の五六歳ごろのことである。といえば妾の本当の年齢が知れてしまって恥かしいことではあるが、まあ算術などしないで置いていただきたい。
妾の尋ねるはらからについては、それ以前の記憶もなく、またその以後の記憶もない。まるで盲人が、永い人生を通じて只一回、それもほんの一瞬間だけ目があき、そのとき観たという光景がまざまざと脳裏に灼きついたとでも譬えたいのがこの場合、妾のはらからに対する記憶である。思うに、それより前は、はらからと一緒にいたこともあるのであろうが、当時妾は幼くて記憶を残すほどの力が発達していなかったのだろうし、それ以後は、妾とはらからとが何かの理由で別々のところに引き離されちまって記憶が絶えてしまったのであろう。とにかく川沿いの寮の光景は恰も一枚の彩色写真を見るようにハッキリと妾の記憶に存している。
なぜ妾がはらからを探すのかという詳しいことについては、おいおいとお話しなければならぬ機会が来ようと思うから、今はまあ云うことを控えて置こうと思う。
――とにかく当時は五歳か六歳だった。黄八丈の着物に鹿の子の帯を締め、そしてお河童頭には紅いリボンを三つも結んでいるというのがそのころの妾自身の身形だった。妾の尋ねるはらからというのは、その頃寮の中に設えられた座敷牢のような太い格子の内側で、毎日毎日温和しく寝ていた幼童――といっても生きていれば今では妾と同じように成人している筈だ――のことだった。
「なぜ、あの幼童は、暗い座敷牢へ入れられていたのだろう?」