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TORENDIA

春遠し

本文約3,200字 ・ 読了時間 約7分

あらすじ(AIが作成しました)

総選挙の結果、多くの婦人代議士が誕生した一方で、投票にあたっては選挙人名簿の記載漏れが多発し、政治への深刻な姿勢が欠如していたことを明らかにする。当選した議員の職業や各政党の構成を検証すると、資本家や旧体制の支持者が多くを占めており、真の民主化には程遠い現状が浮き彫りになる。本作は、この選挙結果を冷静に吟味し、勤労人民の生活を守るために代議士の活動を監視し、次なる民主的選挙へ備える重要性を説く。

宮本百合子

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🎧 春遠し / 朗読音声: VOICEVOX:青山龍星

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総選挙はひとまず終った。

気づかわれていた婦人の棄権も案外にすくなく、棄権は全国平均して二割七分七厘。婦人候補者の四割八分は当選して二十八歳から六十六歳まで三十九名の婦人代議士が当選した。今回の総選挙で計四六四名の代議士が選出されたなかで、最高点を占めた婦人候補者が五名もいるのである。

この結果は、誰にとっても、いくらか予想外の感じを与えている。婦人の進出の目ざましさは大変派手やかに写真入りで各新聞に語られているし、外人記者も、珍しいこととして注目している。進歩党や自由党の首領たちは、得票を婦人にくわれたと表現しているのである。

日本の婦人は政治に無関心であると、どの位云われて来ただろう。婦人自身にしても、参政権などよりも、やすいお藷がほしいと云い、それどころか暇がなくて、と、何度云って来たことだろう。それにもかかわらずこういう結果があらわれた。婦人たちが、そんなに急に、自分たちの生活のひどさの理由を発見し、そんなに急に自覚して来たというわけなのだろうか。

私たちは、自分たちの幸福のために今度の総選挙の結果を落ちついて吟味して見なければならないと考える。

第一、今度の総選挙は、日本の民主化のための重大な国民の行事であった。そのために、四月十日は休日になった。それほど大切な投票であるのに、全国で十四万人余の選挙人名簿記載洩れが生じた。新聞は、婦人参政権のために、殆ど一生を費して来た市川房枝女史が、当日わざわざ遠方の投票所へ行ってはじめて記載洩れで投票出来ないことを発見した気の毒な実例を報じた。市川房枝さんの心持はどんなであったろう。そういう人が、何万人とあるわけである。青森市では、記載もれの市民大会が開かれ、市長以下責任者が退陣しなければならなくなった。長野の或るところでは、役場の責任者が、責任感から行方不明となり、自殺したかもしれないと云われている。

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