本文へ移動
TORENDIA

アメリカ文士気質

本文約1,500字 ・ 読了時間 約4分

あらすじ(AIが作成しました)

アメリカ滞在中の見聞を基に、日米の文士たちの創作に対する姿勢の違いを論じる。商業的な性質を強く持つアメリカの執筆者に対し、日本では名人気質による創作活動が根強いと分析する。特にニューヨークのガリーンウィッチ・ビレージの若い芸術家たちが発行する同人雑誌『プレー・ボーイ』の陽気な気質や、文学を趣味の範疇と捉える現地の創作態度などを通じ、両国の国民性から生まれる表現の在り方について考察を収める。

宮本百合子

速度
🎧 アメリカ文士気質 / 朗読音声: VOICEVOX:もち子さん

💰 この本を応援する(投げ銭)

1 / 2

私がアメリカにおりましたのは僅か一年半ばかしのことで、別にたいした感想もありません。が、向うへ行く前までは家庭にばかりいて、本当の世間というものを直接に余り見たことのない私には、それがたとい短かい一年半にしてもこの「世間を見て来た」という点に於いてよいことであったように思われます。そして、以前とは多少、物の見方や考え方なども自分ながら変って来ていることにも気付きますが、併し、そんなことを長々と申しましたところで、それは私自身のことで、この雑誌の読者の方にはわかり悪くもありましょうし、また興味もありますまいかと思われます。そこで、内的な私自身のことをお話するよりも、もっと一般的な意味で、私の見て来た彼方の同人雑誌のことをほんの少しだけ申してみましょう。

彼方でもやはり日本と同じように、『文章倶楽部』のような雑誌もありますし、また『奇蹟』とか『異象』とかいうような同人雑誌も沢山あります。併し、その根本になっている心持なり態度なりが此方のものとは大変に異っているように見えます。それは一面たしかに国民性から出ているものです。

彼方では一般が商取引風になっているように、やはり文筆を執りつつあるものの間にも、それがあります。作品として出来上がった結果のよしあしは別として、日本などとは丁度反対で、名人気質の人がどうも少ないようです。

この私の見方は丁度、三人の按摩さんが各自思い思いに象のからだの一部を摩って見て、

「象という獣は鼻のような形のものだ。」

「いやそうじゃない、尻尾のようなものだ。」

「いや、足のようなものだ。」

と言い合っているような類いで、その見る人によっては全く異ったものに感ずるでしょうけれども、とにかく、私はそういう風に感じ、観、また考えても参りました。

宮本百合子の他の作品

同じジャンルの朗読つきの本