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TORENDIA

不連続殺人事件

本文約161,000字 ・ 読了時間 約322分

あらすじ(AIが作成しました)

昭和二十二年、山中の酒造家である歌川一馬の邸宅に、複雑な人間関係を持つ文士や芸術家たちが一夏を過ごすために集まる。気難しい客人たちが互いに反目する中、邸宅では不可解な殺人事件が連続して発生する。犯人を推測する投票遊びが持ち上がり、事件の渦中にいる人々の思惑が交錯する。本書は、探偵小説の定石である消却法を覆すような、人間心理に基づいた合理的な殺人事件の展開を綴る。

坂口安吾

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一 俗悪千万な人間関係

昭和二十二年六月の終りであった。私は歌川一馬の呼びだしをうけて日本橋のツボ平という小料理屋で落ちあった。ツボ平の主人、坪田平吉は以前歌川家の料理人で、その内儀テルヨさんは女中をしていた。一馬の親父の歌川多門という人は、まことに我ままな好色漢で、妾はある、芸者遊びもするくせに、女中にも手をつける。テルヨさんは渋皮のむけた可愛いい顔立だからむろん例外ではなく、その代りツボ平と結婚させてくれた時には小料理屋の資金も与えてくれたのである。一馬の東京の邸宅は戦災でやられたから、彼は上京のたびツボ平へ泊る。

「実はね、だしぬけに突飛なお願いだが、僕のうちで一夏暮してもらいたいのだ」

一馬の家は汽車を降りて、山路を六里ほどバスにのり、バスを降りてからも一里近く歩かなければならないという不便きわまる山中なのである。そんなところだから、私たち数名の文士仲間は、戦争中彼の家へ疎開していた。ひとつには彼の家が酒造家で、酒がのめるという狙いの筋もあったのである。

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