本文へ移動
TORENDIA

隣組の文化運動

本文約1,100字 ・ 読了時間 約3分

あらすじ(AIが作成しました)

大政翼賛会文化部による「隣組文化運動」に関する懇談会の模様を綴り、町内会や隣組の運営における文化の重要性を論じる。文化的要素の乏しい地域における機運の醸成を課題とし、専門家の知見や人間心理の洞察が自発的な協力体制を導く可能性を考察する。戦時下における生活力の強化を目的として、隣組の家族化や町内の郷土化を提唱し、地域に在住する文化職能人が主体的に協力する体制の構築を説く。

岸田國士

速度
🎧 隣組の文化運動 / 朗読音声: VOICEVOX:春日部つむぎ

💰 この本を応援する(投げ銭)

1 / 2

大政翼賛会文化部を中心に「隣組文化運動」に関する懇談会が開かれた。問題は主として町内会の運営に文化方面の考慮がもつと払はれなければならぬこと――隣組の性格によつて、いはゆる文化的な要素を多分にもつてゐるところは、おのづからさういふ運動の機運が起つてゐるけれども、逆に文化的要素の少いところほど、実は、その必要があるにも拘はらず、機運の醸成が困難であつて、これをなんとかしなければならぬといふ点にあつたやうである。

出席者はそれ/″\町内会長またはその役員、隣組長の肩書をもつた人々であつて、いづれも文化的職能の専門家である。その発言には具体的に経験を織り込んだ傾聴すべき意見も間々あつたが、しかし、私が特にこの懇談会を通じて感じたことは、かういふ人々の専門的な智能が町内会や隣組の運営に直接役立つといふよりも、むしろ、概ね理想主義的傾向をもつこれらの人々の、名利をはなれた情熱と良心、現実的な問題を処理する微妙なコツ――いひかへれば、人間心理の洞察力と生活感情の豊かさが、知らず識らず、事務を事務に終らせないで、一般の自発的協力を導きだす強味になつてゐるのではないかといふことである。

文化運動の出発点は実にこゝにあるのであつて、仮に国策として要求された、ある種の実践運動がいはゞ「物質的」或は「経済的」な問題に属してゐても、これを次ぎ次ぎに徹底させ、効果をあげて行くためには、どうしても「文化運動」としての一面がこれに加はらなければならぬと私はかねがね信じてゐる。それはつまり簡単にいへば「表現の魅力」といふことである。言葉の綾といふやうなものでは絶対になく、人間の心と心とが触れ合ひ、そこに美しい共感の生じるやうな表現をもつて愬へかけることが絶対に必要である。

岸田國士の他の作品

同じジャンルの朗読つきの本