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TORENDIA

新しい歌の味ひ

本文約1,100字 ・ 読了時間 約3分

あらすじ(AIが作成しました)

神経が過敏になり、家族に対してさえ沈黙を求める二十七八歳の男の心理状態を描く。夕食の場での緊迫した空気や、北欧の物語を読了した後の深夜、窓の外の秋風の音に耳を傾けながら、薄汚れたカーテンや過ぎ去った日々に思いを馳せる孤独な時間の推移を綴る。

石川啄木

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🎧 新しい歌の味ひ / 朗読音声: VOICEVOX:もち子さん

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人聲の耳にし入らば、このゆふべ、

涙あふれむ、――

もの言ふなかれ。(哀果)

「妻よ、子よ、また我が老いたる母よ、どうか物を言はないで呉れ、成るべく俺の方を見ないやうにして呉れ、俺はお前達に對して怒つてるのぢやない、いや、誰に對しても怒つてなぞゐない。だが今は、何とか言葉でもかけられると、直ぐもうそれを切掛けに泣き出しさうな氣持なのだ。さうでなければ、また何日かのやうに、何の事もないのに酷く邪慳な事を爲出して、お前達を泣かせなくてはならんやうになりさうなのだ。どうか默つて俺には構はずにゐて呉れ、一寸の間――この食事を濟まして俺が書齋に逃げ込んでしまふまでの間で可いから。」

かう言つたやうな心を抱きながら、無言で夕の食事をしたゝめてゐる男がある。年は二十七八であらう。濃い眉を集め、さらでだに血色のよくない顏を痛々しい許り暗くして、人の顏を見る事を何よりも恐れてゐるやうな容子を見ると、神經が研ぎすました西洋剃刀の刄のやうに鋭くなつてゐて、皿と皿のカチリと觸れる音でさへ、電光のやうに全身に響くらしい。

書を閉ぢて

秋の風を聽く、

カアテンの埃汚れのひどくなれるかな。

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