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TORENDIA

差押へられる話

本文約2,300字 ・ 読了時間 約5分

あらすじ(AIが作成しました)

所得税法に対して不服を抱く文士が、抗議の手段として納税を拒絶し、税務署との間で差押えを巡る攻防を繰り広げる経緯を綴る。恒産を持たず、頭脳という材木を切り売りする不安定な文筆業の収入に、実業家と同等の税率を適用することの不当性を主張する。妻の持ち物や家庭の調度品を対象に行われる度重なる差押えと、競売の通知を巡る滑稽なやり取りを通じて、作家という職業の特殊な経済事情と税務署の対応を軽妙に描き出す。

菊池寛

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🎧 差押へられる話 / 朗読音声: VOICEVOX:もち子さん

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私は、所得税に対して不服であつた。附加税をよせると、年に四百円近くになる。私は官吏や実業家のやうに、国家の直接な恩恵を受けてもゐないのに、四百円は、どんな意味からでも、取られすぎると思つた。文士など云ふ職業は、国家が少しも歓待もしなければ、保護奨励もしない。奨励しないどころか、発売禁止だとか上演禁止だとかで脅してゐながら、その上収入に対して、普通の税率を課するのは、怪しからないと思った。

私の昨年の所得決定額は、日本一、二の富豪安田某の四十分の一であり、渋沢栄一氏の四分の一であつたので憤慨した。実業家など云ふものは、巨万の恒産があつての上の利子的の収入である。恒産があつて、年に一定の収入があれば、私も喜んで納税したい。が、恒産のない、その日ぐらしではなくても、その月ぐらし程度の我々に、実業家の収入に課する税率を課せられるのは、やり切れないと思ふ。安田何某の四十分の一はおろか、四千分の一の財産も持たない我々の収入だけが四十分の一に評価され、所得税法を適用せられるのは可なり不当だと思ふ。

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