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TORENDIA

生滅の心理

本文約4,300字 ・ 読了時間 約9分

あらすじ(AIが作成しました)

生と滅が相関し、滅を背景に持つ生こそが力強く積極的であるという生滅の心理を論じる。日常生活から社会情勢、男女の情愛に至るまで、あらゆる物事は生滅のリズムで刻まれていると説く。また、物に執着せず自由を保つ心が真に活力ある努力を生むと主張し、生滅の真理を探究することが芸術や人間の成熟においていかに重要であるかを綴る。

田山録弥

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🎧 生滅の心理 / 朗読音声: VOICEVOX:九州そら

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一

生と滅との相聯関してゐる形は到る処にそれを発見することが出来る。生の究竟に滅あり、滅の究竟に生あり、又これを実際の心理に照して見ても、滅を背景に持つた生は、持たない生よりも力強く、生を背景に持つた滅は、決して滅ではないといふことが考へられる。捨てたものほど強いものはない。かう昔から言はれてゐるが、捨てなければ、滅しなければ、または滅をしつかりとその根柢に所有して居なければ、本当の積極的主観は迸出して来ないものである。心の泉を汲んで汲んで汲み干して了ふと、あとから新しい泉が滾々として湧いて来ると言ふが、それも矢張さうした異常なる心理である。

捨身になるといふ言葉がある。これも矢張さうである。自暴自棄の心境は、生も滅もすつかり傍にやつて了つたやうな形であるが、捨身はさうではない。滅の中に力強い生を発見した形である。それから自然主義時代に、『あきらめ』と言ふことがよく口に上つたが、そしてその『あきらめ』といふことを単に妥協風に考へて卑しめたものだが、この『あきらめ』も消極的でない限り、矢張生を孕んでゐる滅である。

勝つといふことと敗けるといふこととこれも矢張生滅の裏表の心理である。『敗けるが勝』その反対に、『勝利者の悲哀』乃至『勝利の犠牲』といふ言葉がある。勝つといふことに敗けるといふことが連り、敗けるといふことに勝つといふことが相繋つてゐるのである。

生滅の刻んでゐるリズム、これほど確とした大きな立派なものはない。細は何処までも細で、大は何処までも大である。我々は一日乃至一秒時間の中にもこの生滅のリズムの刻んでゐるのを認めることが出来ると共に、無窮の人生と宇宙の間にもその波の起伏してゐるのを認める。文芸上ロマンチイシズムの次に自然主義が起り、自然主義の次に理想的民衆主義が起りつゝあるのも、実はその一起一伏の大きな『あらはれ』である。生滅のリズムである。

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