本文へ移動
TORENDIA

酒倉

本文約1,600字 ・ 読了時間 約4分

あらすじ(AIが作成しました)

隣り合う甲と乙の二国は戦争を繰り返している。甲の軍勢は、乙の軍勢を誘い込み、毒を混入した酒と水で壊滅させる奇策で勝利を収める。やがて甲の軍勢は乙の国へ侵攻するが、無人の村で食糧を探す大将は、足の不自由な少年と出会う。少年が告げた毒の有無に関する情報を、大将は真実と逆に解釈し、軍勢を率いて自ら罠へと飛び込んでいくという戦争の悲劇と報いを描く。

小川未明

速度
🎧 酒倉 / 朗読音声: VOICEVOX:玄野武宏

💰 この本を応援する(投げ銭)

1 / 2

上

甲と乙の二つの国は、隣り合っているところから、よく戦争をいたしました。

あるときの戦争に、甲の国は乙の国に破られて、乙の軍勢は、どしどし国境を越えて、甲の国に入ってきました。甲の大将は、とても正当の力では乙の軍勢を防ぐことができない、そうして降参しなければならないと思いましたから、これはなにか策略を巡らして、乙の兵隊や、大将どもを殺してしまわなければならぬと考えたのであります。

そこで、乙の軍勢が、甲のある小さな町を占領したときに、甲の大将は、すっかりその町の食物を焼き払って、ただ、酒と水ばかりを残しておきました。そうして、その酒と水には、ことごとく毒を入れておきました。大将は、敵がきっと腹を減らして、のどを渇かしてくるにちがいない。そのとき、食物がないから、きっと酒を飲み、水を飲むにちがいないと思ったのです。そうして、この町から逃げてゆきました。

はたして、乙の軍勢はえらい勢いでこの町を占領しましたけれど、食物がありません。みんなは腹が空いてのどが渇きますものですから、大将はじめ兵士は、いずれも酒を飲み、水をがぶがぶ飲んだのであります。すると、急に腹が痛みだしてきて、みんなは苦しみはじめました。そうして、時を移さずにごろごろと倒れて死んでしまいました。

はるかに、このようすを見ていました甲の国の大将は、このときだと思いました。負けた兵士を勇気づけて逆襲をいたし、さんざんに弱った乙の国の軍勢を破りました。

思わぬことにほこ先をくじいた乙の軍勢は敗けて退却いたしますと、今度は甲の軍勢は急に勢いを盛り返して、逃げる乙の軍勢を追ってゆきました。

いつしか乙の軍勢は国境を越えてわが国に逃げ帰り、とうとうこの戦争は、甲の勝利に帰してしまいました。そうして、甲の国の大将が奇略を用いたから戦争に勝ったというので、たいそうその大将は人々にほめられました。

けれど、平和はただちに破れて、また二国は戦争を始めました。

下

今度は甲の国が勝ちつづけて、その軍勢は、国境を越えて乙の国へ侵入したのであります。

小川未明の他の作品

同じジャンルの朗読つきの本