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TORENDIA

ものぐさなきつね

本文約2,200字 ・ 読了時間 約5分

あらすじ(AIが作成しました)

毎夜、夜空から下界を照らす星と、朝の訪れを告げる鶏は、互いに情報を共有し合う親しい友人として日々を過ごす。冬の到来により鶏が小舎へ閉じ込められる中、空腹のあまり里へ降りてきた狡猾なきつねが鶏を襲おうと画策する。星はきつねを村へ行かせまいと、夜明けまで待つよう諭して足止めを図る。やがて周辺で犬の鳴き声が響き渡り、危機を悟ったきつねが退散するまでの様子を描く。

小川未明

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🎧 ものぐさなきつね / 朗読音声: VOICEVOX:九州そら

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一

星は、毎夜さびしい大空に輝いていました。そして下界を照らしていましたけれど、だれも星を見てなぐさめてくれるものとてなかったのです。星は、それを頼りないことに思っていました。

鶏が、朝早く起きて、そのりこうそうな黒い瞳の中に、星影を映して、勇んで鳴いてくれなかったならば、星は、毎夜毎夜、音もない野原や、黒い村や、白く霧のかかった林や、ものすごい水の上を照らしていることが、もう飽き飽きして、まったくいやになってしまったにちがいありません。

けれど、若々しい鶏の喜ばしそうな鳴き声を聞くと、星は、すべての長い夜の間の物憂かったことなどを忘れてしまいます。そうして、つい鶏の愛想のいいのに引き込まれて、いっしょに日の上らない朝の間を楽しく送るのでありました。

そのうちに太陽が東の空を上ると、もはや鶏に別れを告げなければなりません。星はさも名残惜しそうにして、西の空に没してゆくのでありました。すると鶏も、もう鳴くのをやめてしまいます。

こんなふうにして、星と鶏とはたいそう仲がよかったのです。星の黙って、ぴかぴかとしてお話をするのを、鶏は頭を傾けて聞いていました。そして鶏だけには、星のものをいうことがよくわかりました。また、鶏の鳴いていろいろなことを話すのも、星にはよくわかりました。

「まだ牛も馬も眠っています。私だけが起きたのです。」と、鶏は、大きな声を出して叫びます。またつぎに、

「いま、ようやく家の人たちは起きました。そして、勝手もとでガタガタ音をさせています。いま、ろうそくに火を点けて、裏口の方へ出てゆきます。きっと馬にまぐさをやるのでしょう。」と、鶏は告げていました。

二

かくして、毎朝、星は夜の間に見た不思議なことを鶏に知らせ、また鶏は、村の中のできごとを星に知らせて、たがいに春から秋になるまで、長い間、仲のいい友だちであったのです。星がしめやかな言葉つきで、

「いま、寒い風が、あちらの遠い森の中で騒いでいる。」と、鶏に告げますと、鶏は、うなだれて体じゅうを円くしてちぢむのでした。

「しかし、鶏さん、私はおまえさんを毎晩守ってあげますよ。」と、星はいったのです。

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