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TORENDIA

二百十日

本文約5,000字 ・ 読了時間 約11分

あらすじ(AIが作成しました)

孫の正二とおじいさんが庭のくもの巣にかかったやんまを助ける場面から物語は始まる。その後、正二は友達の徳ちゃんと共に畑でお化けごっこを企画し、周囲を驚かせて騒動を起こす。夜が更けて二百十日の風が吹き荒れる中、翌朝には強風による庭の被害が明らかになり、年雄の飼っている鳩が帰らないという知らせを受けて、二人は秋の訪れを感じながら村を歩く。

小川未明

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🎧 二百十日 / 朗読音声: VOICEVOX:九州そら

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空高く羽虫を追いかけていたやんまが、すういと降りたとたんに、大きなくもの巣にかかってしまいました。しまったといわぬばかりに、羽をばたばたして逃げようとしたけれど、どうすることもできませんでした。

縁先で、新聞を読んでいたおじいさんは、ふと顔を上げた拍子に、これが目に入ってじっと眼鏡の底から、とんぼの苦しがるのを見たのであります。

かわいそうにと、おじいさんは、思いました。年をとると、すべてのことに対して、憫れみ深くなるものです。そして、いまにもくもが出てきて、目の前で、とんぼの殺されるのを見るにしのびませんでした。

「正二や。」と、おじいさんは、孫を呼びました。自分にはどうにもならなかったからです。

あちらのへやで、明日の宿題をしていた正二は、何事かと思って、すぐに祖父のところへやってきました。

「なんですか、おじいさん。」

「あれ見な、いまやんまが飛んできて、くもの巣にかかったんだ。かわいそうだから助けてやんなさい。」

正二は、いつも、こんなようなことに出あったときは、人にいわれなくとも、自分から進んで助けてやる性質でありました。

「くもは、どうしたのか、出てきませんね。」と、正二は、不思議そうに、見上げていました。

「いや、どこかに隠れていて、やんまの弱るのを待っているのだ。なかなかずるいやつだからな。はやく助けてやんなさい。」

おじいさんは、まごまごしていると、やんまが、疲れて死んでしまうと思ったのでした。

正二は、勝手もとへいって、長い物干しざおを取って、裏の方へまわりました。庭には日ごろから、おじいさんの大事にしている植木鉢が、たなの上に並べてありました。彼は、それを落とさないように、自分の力にあまる長いさおを持ち上げて、垣根の際までいきましたけれど、まだそのさおの長さでは、くもの巣までとどきませんでした。

「おじいさん、だめですよ。」

やんまは、まだ生きていて、ときどき思い出したように、羽ばたきをしました。けれど、どうしたのか、くもはまだ姿を見せませんでした。

「さおが短いか、よわったのう。」と、おじいさんは、眼鏡の中から、小さな光る目で、やんまを見つめていられました。

「ああ、重い。」

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