遠くで鳴る雷
本文約2,500字 ・ 読了時間 約6分
あらすじ(AIが作成しました)
二郎は家の圃で丹精込めて育てた立派なきゅうりを収穫する。母親からこれを水神様へ供えるよう言われ、河へ投げ入れる。きゅうりは流れ流れて遠い地へたどり着き、みすぼらしい身なりの子供に拾われる。きゅうりを手にした子供は遠くから流れてきた喜びを感じ、その地にも夏が訪れたことを知る。丹念に育てた野菜を捧げる少年の慈しみと、水によって運ばれた贈り物が別の子供の元へ届く過程を描く物語である。
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二郎は、前の圃にまいた、いろいろの野菜の種子が、雨の降った後で、かわいらしい芽を黒土の面に出したのを見ました。
小さなちょうの羽のように、二つ、葉をそろえて芽を出しはじめたのは、きゅうりであります。
そのほかにもかぼちゃ、とうもろこしの芽などが生えてきました。
きゅうりは、だんだんと細い糸のようなつるを出しました。お母さんは、きゅうりの植わっているところに、たなを造ってやりました。たなといっても、垣根のようなものであります。それに、きゅうりのつるはからみついて、のびてゆくのであります。
やがて、ほかのいろいろな野菜の芽も大きくなりましたが、いつしかきゅうりのつるは、その垣根にいっぱいにはいまわって、青々とした、厚みのある、そして、白いとげのようなうぶ毛をもった葉がしげりあったのでありました。
そのうちに、黄色の、小さな花が咲きました。その花のしぼんだ後には、青い青い、細長い実がなったのであります。
二郎は、毎年、夏になると、こうしてきゅうりのなるのを見るのでありますが、その初なりの時分には、どんなにそれを見るのが楽しかったでしょう。
「もう、あんなに大きくなった。」と、彼は、毎日のように、家の前の圃に出ては、きゅうりの葉蔭をのぞいて、一日ましに大きくなってゆく、青い実を見ては、よろこんでいたのであります。
いくつもきゅうりの実はなりましたが、その中に、いちばん先になったのが、いちばん大きくみごとにできました。
「お母さん、きゅうりがあんなに大きくなりましたよ。」と、二郎は、外から家の内に入ると、毎日のように母親に告げました。
「ほんとうに、いいきゅうりがなったね。」と、お母さんはいわれました。
二郎は、そのきゅうりがよくてよくて、しょうがありません。
毎日それに、さわってみては、もいでもいい時分ではないかと思っていました。
ある日のことでありました。お母さんは、二郎に向かって、
「二郎や、あの大きくなったきゅうりをもいでおいでなさい。つるをいためないように、ここにはさみがあるから、上手にもいでおいで。」といわれました。