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TORENDIA

人類の将来

本文約20,200字 ・ 読了時間 約41分

あらすじ(AIが作成しました)

人類が脳と手を発達させ、器械と言語を用いることで生存競争に打ち勝ち、現在の優勢な地位を築いた過程を辿る。既往の生物の変遷から法則を見出し、人類の将来を推測する論考である。貨幣の流通により自然淘汰が機能しなくなった現状において、社会に不平不満が渦巻き、人類が滅亡へ向かっている可能性を説く。しかし、盛者必滅は自然の摂理であり、来るべき終末を過度に憂慮する必要はないと結ぶ。

丘浅次郎

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一

何事に限らず未来を説くのは決して容易ではない。昔から「一寸先は暗」と云ふ通り、次の瞬間に如何なることが起るかは、前以て知ることの出来ぬが常である。多少学術上の根拠を有する天気予報でさへ当らぬことが多い故、世間からは当るも八卦、当らぬも八卦と同様に見做されて居る。されば今日の所では未来の予言は到底普通の人間には出来ぬことで、若し之を為し得る者があつたならば、其者は必ず人間以上の所謂予言者の類でなければならぬ如くに思はれて居る。

然しながら、未来のこととても、総べてが全く予言の出来ぬもののみとは限らぬ。来年の暦に何月何日には日蝕が有つて、何時何分何秒に始まつて、何時何分何秒に終ると明記してあるが、それが必ず確に当る。今年現はれるハレー彗星なども幾十年も前から既に今年現はれるべきことが天文学者には知れてあつて、今後また何十何年目に再び現れ出ると云ふ事までが明かに解つて居る。他の方面に於て予言が総べて不可能なる如くに見ゆるに反し、天体に関してのみ斯く正確に予言の出来るのは何故であるかと云ふに、之は決して特別な秘密がある訳ではなく、たゞ既往に於ける天体の運動を正確に測定し、其の運動を支配する法則を探り求め、之を将来に当て嵌めて、予言するのみである。されば他のこととても、天文学で将来を推測するのと同一の方法によつて考へたならば、多少の予言の出来ぬことはない。我らが今此所に聊か人類の将来に就いて論ずるのは、決して予言者を以て自ら任ずる次第ではなく、単に天文学者が天体を観測し研究するのと同一の態度を取り、生物界の既往の変遷を調べ、それより生物各種の栄枯盛衰を支配する法則を探り求め、之を人類の場合に当て嵌めて、其の将来を推測しやうと試みたに過ぎぬ。天体の運動の簡単なるに反し、生物界に起る現象は極めて複雑であつて、到底数学的に計算は出来ぬから、時を指して予言することは素より出来ぬが、唯その進み行く方向と、終に達すべき終局点とだけは恐らく誤りなく推測し得るであらうと信ずる。

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