幸福のなかに
本文約560字 ・ 読了時間 約2分
あらすじ(AIが作成しました)
明治二十五年四月九日に生まれた著者は、森羅万象から美を見いだす能力と周囲の愛情に恵まれて生きてきた幸福な半生を振り返る。花や月、雪など、生きて楽しむべきものが多いと語りつつ、死に対する達観した心境も吐露する。今後の制作活動に関しては、ライフワークとなるテーマを抱えながらも、機縁を待つ穏やかな姿勢で創作と向き合う日々を綴る。
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これが第六回目の年男であろうか。あともう二回ぐらいは年男になれそうな気もするがあと三回はむずかしいかも知れない。
明治二十五年壬辰の四月九日はどんないい星まわりの日であったか、わたくしは森羅万象から美を見いだす能力を与えられ、また師友や家族のすべての愛情の中に生きることのできるのは、われながら、よほど祝福された身の上と思う。去年は偶然にも紅葉の美を満喫したから、ことしは花をぞんぶんに見たいものである。それから月や雪やそのほか。生きて見るべく楽しむべきものも多い。幸福であるからもっと生きていたいとも思う。しかし全く同じ理由でいつこの生を終わっても悔いがないような気もする。
習作のかずかずを書き紙屑の山に埋もれて老いけり我は とは本年のお題「紙」に因んで口吟してみた腰折れであるが、実のところわたくしはあまり紙くずを多くつくる方でもなし、また自分の習作の全部を紙くずと思うほど、それをやすっぽく値ぶみしてもいない。
それにしても、もうそろそろライフワークとやらを心掛けてもよいかも知れない。そのテーマの腹案も無いでもないが、果たしていつできるやら、できないやら。作品も自力だけで成るものではなく機縁がなければどうにもならないから、むやみとはあせらない。できたらうれしいが、できなければそれでもよいような心境である。
完