TORENDIA
某月某日
山本周五郎
TORENDIA
某月某日
本文約400字 ・ 読了時間 約1分
あらすじ(AIが作成しました)
市電の停留所で、たった七百両しか手元に残らなかった月給への怒りを喚き散らし、ついに酔い潰れて倒れてしまう工員ふうの男を活写する山本周五郎の掌編。
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🎧 某月某日 / 朗読音声: VOICEVOX:波音リツ
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午後十時すぎ。桜木町駅前の市電の停留所で、一人の酔っぱらいが喚いている。安全地帯は鉄柵で囲ってあるが、彼はその柵に凭れて、躯ぜんたいをぐらぐらさせながら喚く、年は五十がらみ、工員ふうの、痩せた小柄な男である。「なんでえ、七百両ぽっち。みんな呑まずにいられるかってんだ、この泥棒」彼は危なく倒れそうになる。「押すな」と彼はどなる。「押すな、危ねえぞ」と彼は手をふり回す。「ちえっ、三つき分も溜ってる月給を、七百両ぽっちでどうするんだ、やい、七百両ぽっち家へ持って帰れるかよ、泥棒」彼はまた倒れそうになる、「泣いても泣ききれねえ、おらあ泥棒になってやる、強盗だってなんだってやってやる、嬶や餓鬼なんか、おれが強盗したってなんだって、やい押すな」彼は鉄柵にしがみつく、「泥棒、やい泥棒、ざまあみやがれ、みんな呑んじまったぞ、泥棒」そして彼はついにぶっ倒れてしまった。
「日本経済新聞」(昭和二十九年十一月)
完
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