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TORENDIA

親子

本文約20,500字 ・ 読了時間 約41分

あらすじ(AIが作成しました)

秋の北海道の農場を訪れた息子は、開墾地の精算をめぐって猜疑心をあらわにする父の厳格な態度を目の当たりにする。金銭や世俗の利害を追求する父の姿に息子の心は揺らぎ、理想を掲げる自分との対立や親子の絆について葛藤する。やがて、家族の将来を案じて泥臭い苦労を重ねてきた父の偽らざる心情を吐露され、息子は自身の未熟さを自覚するとともに、抗いがたい血の繋がりとそこにある淋しさをかみしめる。

有島武郎

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彼は、秋になり切った空の様子をガラス窓越しに眺めていた。

みずみずしくふくらみ、はっきりした輪廓を描いて白く光るあの夏の雲の姿はもう見られなかった。薄濁った形のくずれたのが、狂うようにささくれだって、澄み切った青空のここかしこに屯していた。年の老いつつあるのが明らかに思い知られた。彼はさきほどから長い間ぼんやりとそのさまを眺めていたのだ。

「もう着くぞ」

父はすぐそばでこう言った。銀行から歳暮によこす皮表紙の懐中手帳に、細手の鉛筆に舌の先の湿りをくれては、丹念に何か書きこんでいた。スコッチの旅行服の襟が首から離れるほど胸を落として、一心不乱に考えごとをしながらも、気ぜわしなくこんな注意をするような父だった。

停車場には農場の監督と、五、六人の年嵩な小作人とが出迎えていた。彼らはいずれも、古手拭と煙草道具と背負い繩とを腰にぶら下げていた。短い日が存分西に廻って、彼の周囲には、荒くれた北海道の山の中の匂いだけがただよっていた。

監督を先頭に、父から彼、彼から小作人たちが一列になって、鉄道線路を黙りながら歩いてゆくのだったが、横幅のかった丈けの低い父の歩みが存外しっかりしているのを、彼は珍しいもののように後から眺めた。

物の枯れてゆく香いが空気の底に澱んで、立木の高みまではい上がっている「つたうるし」の紅葉が黒々と見えるほどに光が薄れていた。シリベシ川の川瀬の昔に揺られて、いたどりの広葉が風もないのに、かさこそと草の中に落ちた。

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