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TORENDIA

我が馬券哲学

本文約2,200字 ・ 読了時間 約5分

あらすじ(AIが作成しました)

馬券は禅機のごとく悟りがたいものであり、人気や情報に惑わされず、自らの鑑定と信念に基づき勝馬を見極めるべきだと説く。競馬を道楽と捉え、自身の研究を基礎として独自の予想を楽しむことこそがファンの正道であるとし、馬券買いにおける心構えや、勝つことよりも分析の過程を重んじる姿勢を綴る。場当たり的な人気や他人からの助言に頼らず、冷徹な思考で馬の実力を判断することの重要性を、剣や棋の修行になぞらえて論じる。

菊池寛

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🎧 我が馬券哲学 / 朗読音声: VOICEVOX:春日部つむぎ

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次ぎに載せるのは、自分の馬券哲学である。数年前に書いたものだが、あまり読まれていないと思うので再録することにした。

一、馬券は尚禅機の如し、容易に悟りがたし、ただ大損をせざるを以て、念とすべし。

一、なるべく大なる配当を獲んとする穴買主義と、配当はともかく勝馬を当んとする本命主義と。

一、堅き本命を取り、不確かなる本命を避け、たしかなる穴を取る、これ名人の域なれども、容易に達しがたし。

一、穴場に三、四枚も札がかかると、もう買うのが嫌になる穴買主義者あり、これも亦馬券買いの邪道。

一、穴場の入口の開くや否や、傍目もふらず本命へ殺到する群集あり、本命主義の邪道である。他の馬が売れないのに配当金いずれにありやと訊いて見たくなる。甲馬乙馬に幾何の投票あるゆえ丙馬を買って、これを獲得せんとするこそ、馬券買の本意ならずや。

一、二十四、五円以下の配当の馬を買うほどならば、見ているに如かず、何となれば、世に絶対の本命なるものなければ也。

一、然れども、実力なき馬の穴となりしこと曾てなし。

一、甲馬乙馬実力比敵し、しかも甲馬は人気九十点乙馬は人気六十点ならば、絶対に乙を買うべし。

一、実力に人気相当する場合、実力よりも人気の上走しる場合、実力よりも人気の下走しる場合。最後の場合は絶対に買うべきである。

一、その場の人気の沸騰に囚われず、頭を冷徹に保ち、ひそかに馬の実力を考うべし。その場の人気ほど浮薄なるものなし。

一、「何々がよい」と、一人これを云えば十人これを口にする。ほんとうは、一人の人気である。しかも、それが十となり百となっている。これ競馬場の人気である。

一、「何々は脚がわるい」と云われし馬の、断然勝ちしことあり、またなるほど脚がわるかったなとうなずかせる場合あり。情報信ずべし、しかも亦信ずべからず。

一、甲馬乙馬人気比敵し、しかも実力比敵し、いずれが勝つか分らず、かかる場合は却って第三人気の大穴を狙うにしかず。

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