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TORENDIA

戦争について

本文約610字 ・ 読了時間 約2分

あらすじ(AIが作成しました)

原子爆弾が奪った凄惨な光景を目撃した著者が、人間が人間を殺戮することの根源的な悲劇を綴る。香港入城の放送で響いた叫び声に衝撃を受けた経験から、戦争という暴力に晒される人類の生存のあり方を見つめ直す。広島の惨劇で横たわる重傷者たちが発した、か弱い声が天に向かって何を訴えているのかを問い、繰り返される戦争の谷間で生きる現代人の孤独と、暴力に対する無力感について沈痛な筆致で論じる作品である。

原民喜

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🎧 戦争について / 朗読音声: VOICEVOX:もち子さん

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コレガ人間ナノデス

原子爆弾ニ依ル変化ヲゴラン下サイ

肉体ガ恐ロシク膨脹シ

男モ女モスベテ一ツノ型ニカヘル

オオ ソノ真黒焦ゲノ滅茶苦茶ノ

爛レタ顔ノムクンダ唇カラ洩レテ来ル声ハ

「助ケテ下サイ」

ト カ細イ 静カナ言葉

コレガ コレガ人間ナノデス

人間ノ顔ナノデス

夕食が済んで病妻が床に横はると、雨戸をおろした四辺は急に静かになる。ラジオばかりが生々しいものをその部屋に伝へてくるのだが、それを聴きながらも、つねにそれを無視しようとする気持が僕にはあつた。それは日本軍による香港入城式の録音放送を聴いてゐた時のことであつた。戦車の轟音のなかから突然、キヤーツと叫ぶ婦人の声をきいた僕は、まるで腸に針を突刺されたやうな感覚をおぼえた。あの時、あの時から僕には、もつともつと怖しいことがらが身近かに迫るだらうとおもへた。それから、原子爆弾による地球大破滅の縮図をこの眼でたしかに見て来たのだつた。

だが、今後も……。人類は戦争と戦争の谷間にみじめな生を営むのであらうか。原子爆弾の殺人光線もそれが直接彼の皮膚を灼かなければ、その意味が感覚できないのであらうか。そして、人間が人間を殺戮することに対する抗議ははたして無力に終るのであらうか。……僕にはよくわからないのだ。ただ一つだけ、明確にわかつてゐることがらは、あの広島の惨劇のなかに横はる塁々たる重傷者の、そのか弱い声の、それらの声が、等しく天にむかつて訴へてゐることが何であるかといふことだ。

完

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