一つの試案
本文約2,800字 ・ 読了時間 約6分
あらすじ(AIが作成しました)
店先に連なる買物行列が常態化した社会情勢を背景に、食料不足の実態と人心の不安、それを解消するための道筋を論じる。不自由を平等に忍び、物流の円滑化と国民の相互信頼を築く必要性を説き、買物行列を解消するための具体的な仕組みとして、町会組織を活用した「町内食生活委員会」の設置や、隣組を通じた注文・共同購入、時間配分の調整といった合理的な生活様式の構築を提言する。
💰 この本を応援する(投げ銭)
一
先ごろから、魚屋、八百屋、菓子屋などの店先き、多くの主婦たちが一列に並んで順の来るのを待つてゐる買物風景は、どこへ行つても見ないといふわけにはゆかない。
日本は、まだまだ食ふに困らないだけのものは持つてゐる。みんなが、ちよつと不自由を忍ぶならば、一時間も二時間も並んで待つまでもなく、日常に食ふだけのものは間に合ふ筈である。もちろん、思ふとほりのものが、思ふぞんぶんに食べられるといふことはない。しかし、すべての人が同じやうに不自由を忍んで行かうとすれば、けつして食ふに困るといふことはないはずである。
なるほど物資の不足は、相当われわれの生活を不自由にするほどになつてゐる。しかし、それはものがないのではなく、ただ、それが一時、国民のすべてに行渡らないといふやうなことで、部分的に相当不自由を感じてゐるのであつて、その点さへうまくゆけば、けつして忍べないほどの不自由ではない。
たゞ恐ろしいのは、あるものをないと思ひこむこと、ないのではないかと疑うことで、そういふ気持が働いて買物に列をつくることにもなるが、これが人心の不安となつて拡がつたならば、その結果はまことに憂ふべきものである。
買物に列をつくるのを止めようといつても、誰かゞひとより先によいものをとらうとしたり、誰かゞ、自分だけ不自由な思ひを少くしようとする気持があれば、列を作ることは止まない。列を作ることを止めるのには、物が円滑に行渡るといふことといつしよにみんなが、自分だけ少しでも不自由を避けやうとする、自分本位の考へ方を止めなければならない。それとともに、また一方には、列をつくらないでも間に合ふやうな、やり方を考へてゆくことが必要である。
二