どこで笛吹く
本文約5,800字 ・ 読了時間 約12分
あらすじ(AIが作成しました)
村の小学校で乱暴者たちから孤立させられた少年・光治は、旅の老人から不思議な笛を授かる。吹く笛の音色で小鳥と心を通わせ、孤独を癒やしていた光治だったが、森で出会った絵を描く少年が持つ美しい画材に憧れ、大切な笛と交換してしまう。しかし、手に入れた画材では少年のようには描けず、後悔した光治のもとに再び老人が現れる。老人は笛を取り戻すよう諭し、光治は笛の少年を探して森を彷徨うことになる。
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一
ある田舎に光治という十二歳になる男の子がありました。光治は毎日村の小学校へいっていました。彼は、いたっておとなしい性質で、自分のほうからほかのものに手出しをしてけんかをしたり、悪口をいったりしたことがありません。けれど、どこの学校のどの級にでも、たいてい二、三人は、いじの悪い乱暴者がいるものです。
光治の級にも、やはり木島とか梅沢とか小山とかいう乱暴のいじ悪者がいて、いつも彼らはいっしょになって、自分らのいうことに従わないものをいじめたり、泣かせたりするのでありました。光治は日ごろから、遊びの時間にも、なるたけこれらの三人と顔を合わせないようにしていました。
学校の運動場には大きなさくらの木があって、きれいに花が咲きました。そして花の盛りには、教師も生徒も、その木の下にきて、遊び時間には遊びましたが、それもわずか四、五日の間で、風が吹いて、雨が降ると、花は洗い去られたように、こずえから散ってしまい、世はいつか夏になりました。そうなると、もはやこの木の下にきて遊ぶものがありません。
光治は、その木の下にきたのでありました。そこは運動場の片すみであって、かなたには青々としていねの葉がしげっている田が見え、その間を馬を引いてゆく百姓の姿なども見えたりするのでした。
そのとき思いがけなく、例の木島・梅沢・小山の乱暴者が三人でやってきて、
「やい、こんなところでなにしているんだい、弱虫め、あっちへいって兵隊になれよ。」
と、三人は口々にいって、無理に光治を引きたてて連れてゆこうといたしました。
「僕は腹が痛いから、駆けることができない。」
と、光治はいいました。
「うそをつけ、腹なんか痛くないんだが、兵隊になるのがいやだから、そんなことをいうんだろう。よし、いやだなんかというなら、みんなでいじめるからそう思え。」
「僕は、いやだからいやだというんだ。僕のかってじゃないか、君らは君らで遊びたまえ。」
と、光治はいいました。
「なまいきなことをいうない、よし覚えていろ、帰りにいじめてやるから。」
と、三人は口々に光治をののしりながら、木の下を見返ってあっちへいってしまいました。