黒い人と赤いそり
本文約4,100字 ・ 読了時間 約9分
あらすじ(AIが作成しました)
北方の海で氷が割れ、三人の男が孤立したまま沖へ流される。救出を志願した五人は、赤いそりに乗って氷原へ向かうが、そのまま消息を絶つ。彼らを見捨てた村の人々は、後に亡霊となって現れる黒い影や、空を駆け抜ける赤いそりの幻影を目撃する。行方不明になった仲間を放置し、何もしなかったことを悔いる村で語り継がれる、不可解で恐ろしい不思議な出来事を描く。
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はるか、北の方の国にあった、不思議な話であります。
ある日のこと、その国の男の人たちが氷の上で、なにか忙しそうに働いていました。冬になると、海の上までが一面に氷で張りつめられてしまうのでした。だから、どんなに寒いかということも想像されるでありましょう。
夜になると、地球の北のはてであったから、空までが、頭の上に近く迫って見えて、星の輝きまでが、ほかのところから見るよりは、ずっと光も強く、大きく見えるのでありました。その星の光が寒い晩には凍って、青い空の下に、幾筋かの銀の棒のように、にじんでいるのが見られたのです。木立は音を立てて凍て割れますし、海の水は、いつのまにか、動かなくとぎすました鉄のように凍ってしまったのであります。
そんなに、寒い国でありましたから、みんなは、黒い獣の毛皮を着て、働いていました。ちょうど、そのとき、海の上は曇って、あちらは灰色にどんよりとしていました。
すると、たちまち足もとの厚い氷が二つに割れました。こんなことは、めったにあるものでありません。みんなは、たまげた顔つきをして、足もとを見つめていますと、その割れ目は、ますます深く、暗く、見るまに口が大きくなりました。
「あれ!」と、沖の方に残されていた、三人のものは声をあげましたが、もはやおよびもつかなかったのです。その割れ目は、飛び越すことも、また、橋を渡すこともできないほど隔たりができて、しかも急流に押し流されるように、沖の方方へだんだんと走っていってしまったのであります。
三人は、手を挙げて、声をかぎりに叫んで、救いを求めました。陸の方に近い氷の上に立っているおおぜいの人々は、ただ、それを見送るばかりで、どうすることもできませんでした。
たがいにわけのわからぬことをいって、まごまごしているばかりです。そのうちに、三人を乗せた氷は、灰色にかすんだ沖の方へ、ぐんぐんと流されていってしまいました。みんなは、ぼんやりと沖の方を向いているばかりで、どうすることもできません。そのうちに、三人の姿は、ついに見えなくなってしまいました。