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しおが満ちるまえに ~あかねのひがた日記~

本文約9,500字 ・ 読了時間 約20分

野々宮 遥

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🎧 しおが満ちるまえに ~あかねのひがた日記~ / 朗読音声: VOICEVOX:雨晴はう

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この物語はフィクションです。登場する人物、町、学校、ひがたは、すべて作者がつくったものです。

一 きょうの日記 いまの話

きょうは、わたしの人生で、いちばん足が速かった日です。

理由は、あとで書きます。

まず、いまの状況から書きます。

あ、先に言っておきます。

けがをした人は、いません。

そうすけが、いない。

いえ、いるけど、遠いです。

ひがたのまんなかで、カニを追いかけています。

ひがた、というのは、海の水が引いたときに出てくる、広い砂や泥の場所のことです。

そして、さっきから、足もとの水が、ふえています。

さっきは、くつの底が、ぬれるくらいでした。

いまは、くつの横まで、きています。

水は、あちこちの低いところから、じわじわ、じわじわ、ふえてきます。

わたしは、岸に近い、先生のいるほうへ走って、先生を呼びました。

先生は、すぐに駆けつけてくれました。

そうすけのほうを見た先生の顔が、さっきまでの笑顔とちがいます。

先生は、ホイッスルを、ぴーっと、強く吹きました。

「そうすけは、先生と案内の人が、呼びにいくぞ」

先生の声は、大きかったけど、落ち着いていました。

「あかねさんとこはるさんは、そこで、待っていなさい。動かないで」

わたしは、「はい」と、返事をしました。

胸が、どきどき鳴っています。

走っていって、そうすけを連れて帰りたい。

そう思いました。

でも、足は動きませんでした。

だって、ここに来る前に、みんなで約束したからです。

一人で、行かない。

それが、いちばん大事な約束でした。

ここから、三日前に、もどります。

わたしが、どうして、いま、ひがたの真ん中にいるのか。

そうすけは、なぜカニを追いかけているのか。

ぜんぶ、順番に書きます。

二 三日前の日記 しおみひょうを見た

三日前、六年一組は、教室で、「ひがた観察の日」の準備をしました。

班は、わたしと、そうすけと、こはるの三人です。

そうすけは、カニが大好きです。

こはるは、時計が大好きです。

わたしは、えっと、元気が大好きです。

班の調べ学習のテーマは、「潮の満ち引き」になりました。

ひがたは、潮が引かないと、出てこないからです。

先生が、一枚の紙を配ってくれました。

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